第16回コミュニティ報告ーiPadの授業実践と活用を支えるハンドアウトの重要性

 定例の第16回コミュニティがいつもの文教大学開場で開催されました。年末、学期末の慌ただしい中の開催でしたので、教員参加は少なくむしろ企業、学生、保護者約20名混合の意義ある会となりました。
 ここのところiPad話題が続きますが、今回も11月に行われた研究発表会で活用された実践例を中心に紹介をしました。話題を集めている佐賀県武雄市、東京都日野市等の行政サイド主導の導入と異なり、越谷市では文教大学の支援の下で学校サイドからの活用なのでそれなりの特徴や意義があると思います。「あそこで使いたい」「このためにこう使いたい」という目標があって使っている事例ばかりです。「さあ、揃えたから使ってみなさい」ではないところに大きな意味があると捉えています。

 さて、実践報告は、文教大学准教授の今田先生のご指導の下、同大OB、現役学生が、市内の城ノ上小、川柳小での活用事例から始まりました。城ノ上小では体育の授業で、身近な先生の演技をスロー再生できる動画で確認するためにiPadをさりげなく四隅に配置。子どもたちはそこへペアで行き、確認し、話し合う。川柳小では、PCクラブの時間にアプリの「しかけ絵本」「BUMP」「Draw」などを駆使して子どもたちの興味関心を集めていました。また、合戦絵巻をiPadならではのピンチイン、アウトの操作で思考を促す使い方を披露されました。どちらも文教大現役学生のアイディアが満載で、なかなか現場の教員が気づかないようなアイディアで授業活用の効果を探っていた意義ある実践でした。

 実践報告2では、やはり市内大沢小における外国語活動での実践例を文教大学院生が紹介。連携している市内栄進中生徒からの英語ビデオレターをiPadに収めて、それを聞き取る実践です。中学生からの英語のメッセージを小学生が何度も繰り返し再生、途中で止めて聞き直すなどのiPadならではの機能を駆使した実践でした。その後、主宰から大袋中における特別活動(学級活動)の実践報告。通学路の危険箇所4箇所選びビデオ撮影し、それをiPadで生徒が見ながら危険予測をするというもの。班(4人)で1台使用し、付箋をiPadに貼りながら意見を出し合い、予測していく。教師は、各箇所の映像場所におけるその後の展開映像(急に車が来て、自転車と衝突しそうになる、一時停止しない自転車が通行人とぶつかる等)を用意しており、自分のiPhoneに入れてある。各班で話し合い、発表し合った後にその映像を見せ、さらに考えや発見を深めていくという展開です。
 今回、報告されたiPad活用事例は、どれも使う必然性を明確にしていたところに意味があります。冒頭に記した「使いたい」の裏に明確な意図があること。これが大事。とかく目新しいガジェットは使うことが先行してしましがちで、使う目的がそっちのけになってしまうと本末転倒である、ということをこれらの事例から学べたと思います。

 休憩、コミュニケーションタイム後の後半は、iPadを活用するときに上記したような意義や意味を持たせるために必須なのが、補助資料ともなる各種プリントです。ハンドアウトとコミュニティでは称しています。この重要性を主宰から説明した後、実際に2〜3人のグループになってもらいiPadを使っての演習。3種類の写真を使って、この写真からどんなハンドアウトが作成できるか、どんなハンドアウトがいいのかを話し合いました。使うことが目的にならないよう、iPadを使って何も目的とするのか、どんな活動させ、どんな発問をするのか等を考え、各班で発表し合いました。様々な立場、職種の人たちが混ざっての演習は、たいへん刺激的で、教員同士ではなかなか出ないアイディアや情報が出され、とても有意義のワークショップとなりました。まさしく「でじたま」ならではのインスパイアされた時間だったと思います。

 コミュニティの様子は添付した写真をご覧いただけると雰囲気が味わえると思われます。また、当日ワークショップで使用したハンドアウトを考えるのまさしくハンドアウトを写真添付しました。

 次回の「でじたま」は、ICTを活用して子どもの言語活動の充実を図る大袋中の「PCによるプレゼン力育成講座」の成果とその指導方法を紹介します。スティーブ・ジョブズに負けるかという意気込みで、NO原稿で子どもたちがパワポを駆使し、パフォーマンスを交えながら5分程度のプレゼンをこなすようになるには・・・という切り口でコミュニティを開催します。日時は追って通知します。また、奮ってご参加ください。

第15回コミュニティ報告ー今回のiPad

 定例の文教大学を会場としたコニュニティ、15回目が開催されました。今回も様々の業種業態の方々24名の参加をいただきました。特に、越谷の大袋中とツイッター交流をしている北海道中川郡本別町立勇足中学校の関根校長先生にも遠路ご参加いただきました。四国高知での全国校長会の帰りに立ち寄り、前半だけではありましたが、「でじたま」を堪能いただきました。ありがとうございました。
 
 さて、今回の内容は前回に引き続きiPad。皆さん関心が高く、この不思議かつ魅力的なガジェットをどう使うかを模索中といったところでしょうか。自己紹介を終えた後に、情報提供の形で、文教大学准教授の今田先生から学部生によるiPad上の動画を拡大(ピンチイン)できるアプリの使い方を紹介いただきました。動画を再生中に拡大できるテクの情報は、なかなか入手できません。こういうレアで、マニアックな情報も「でじたま」ならでは。さらに主宰から本の紹介もさせていただきました。
 「iPadで教育が変わる」矢野耕平 著(マイコミ新書
 「頭脳の散歩 デジタル教科書はいらない」田中眞紀子外山滋比古 著(ポプラ社
 続いて、主宰Jouluriboより「iPadでできること、できないこと」をはっきり掴んで活用しようというレクチャー。iPadは写真や動画が自由に再生でき、閲覧、モニター等への再生ができると思っているとがっかりするということを知ってもらおうというコーナーでした。
 そして、前回行ったiPadの授業活動アイディアのワークショップから気づいたことと前回のブログにも書かせていただいた危惧を紹介。iPadありきが先行するアイディアは、単なるアイディアでしかなく、授業になりませんという厳しいことをあえて言わせていただきました。というのも、授業というのは、言うまでもなくその時間の、その単元のねらいがあるわけで、iPadがあるが故に特別に時間を使って、ある単元の一部に時間を割いてしまうとどうなるか?その単元のねらいを達成させるためのiPad使用ならいいのですが、アイディア先行で、こんな面白いことができる、こんな使い方ができるだけでいくとねらいがズレますよという提言をしたわけです。魔法のツール的な扱いは、危険です。所詮、教材のひとつ、iPadiPadでしかなく、その程度のものと考えておくことがよろしいと思います。そうしないと、前述した本や巷にあふれるデジタル教科書反対派の思うつぼです。(あ、ここで、はっきりしておきたいのですが、私、Jouluriboは、デジタル教科書賛成派でもなければ、反対派でもありません。中立です。教科書より、デジタル教材をもっと充実させようよ派です。教科書はそんなに急ぐ必要はないと思っています。アナログとデジタルを併用し、双方のいいところを共存させたいと思っています。)その後に、参加者2人に1台iPadを体感し、楽しんでいただきました。

 休憩を挟んで、後半はiPadKeynoteのワークショップです。Mac版とまた違った感覚、指でプレゼンシートを簡単に作成する不思議な感触、感覚を味わっていただきました。
参加した方々は、声をあげ皆この未体験の感覚を堪能していました。帰りに購入した方もいたんじゃないですか〜?(ちなみに今田先生は、その場で購入していました・・・すごい!)

 なんだかんだと言っても、iPadは魅力的なツールであることは否定できません。それを学校教育、授業でどう活用するかは、最後は教師なのです。それを媒介として教師と生徒、生徒相互がどうコニュニケーションを図れるかを考えるのも我々教師なのです。そこを学び合う場に「でじたま」はなりたいと考えます。
 今回の沢山の参加、ありがとうございました。次回のコミュニティは、12月中に開催予定です。事務局より、案内を送らせていただきますので、また奮って参加ください。



 

第14回コミュニティ報告ー「iPadをどう授業で活用するか」に隠れる危惧

 いつものように文教大学を会場に第14回コミュニティを開催しました。今回も、教員、教育行政、一般企業、保護者、学生とバラエティに富んだメンバー24名の参加でした。今回はじめて参加される方々も複数で有意義な時間となりました。本日付けで111名のメンバー登録があり、様々で貴重な視点での交流が見込めてありがたいことです。

 今回は、主宰より大袋中学校のiPad実践事例を「相互啓発」「活動機会の拡大」「プレゼンテーションの充実」の3視点から紹介。理科、家庭科、英語、プレゼン力育成講座の授業等の様子を動画で見てもらいました。
 その後に文教大学のI准教授、同先生のゼミを卒業され今年、国立教育政策研究所に入られたIさんによる学力向上と教育の情報化の係わりについてのプレゼン、そしてゼミの学生さんたちによるiPad活用案のプレゼンを行っていただきました。

 そして後半は、実際にiPadに触れながらどう授業等で活用できるかのワークショップ。先の3視点からのアイディアを出し合う時間には、異業種、異校種に分かれて7グループを作って話し合いました。やはり、時間も十分取れないこともあり、まだまだ実感が掴めないのが正直なところでしょう。アイディアを出してもらいましたが、アイディアにとどまってしまいます。では、それを実際に授業化すると具体的にどうなるのか、そのアイディアの実際の教材って何、どうするの、は曖昧なものであるのが現状でしょう。

 実は、iPadってそんなものなのです。
 
 写真を入れる、ビデオを入れる、アプリを使う等のアイディアだけでは授業はできないと考えます。そこには、iPadを使って何をねらうのかが明確でないと、iPadがあるから使う、iPadがあるから使い方を考えなくちゃ、という本末転倒が起こってしまうのです。ここにiPadを率先して行政や私立の学校が揃え、さあ使おうということの危うさがあります。この発想では、きっと行き詰まります。特に行政がモノ珍しさから先行研究といいながら、闇雲に導入してしまうと学校現場は大変困ります。導入するなら、iPadを使って何をねらうのかの明確なビジョンと方策がないと宝の持ち腐れになります。

 実は、今回の「でじたま」は失礼ながらそれをはっきりさせるためのワークショップを仕掛けました。これからは、モノ珍しのiPadからの脱却です。次回のコミュニティでは、「iPadを使うときに何をねらいとするのか」に焦点を当てたいと考えています。

 文教大学のI先生がいみじくもおっしゃっていました。「ゆる〜い学びが売りのでじたまなのにかなり濃い内容になっている」・・・そうですね、でもときにはいいかも・・・ですね(笑)





iPadを授業でどう活用するかー大袋中における考察

 越谷市立大袋中学校では、生徒の「言語活動の充実」を図るべく、文教大学とコンソーシアムを組み、授業でiPadを10台使用しながら研究を進めています。これまでに理科、家庭科、英語の教科で使用し、その活用形態の工夫に取り組んでいます。

 理科と家庭科では、班に1台(8班〜10班程度)iPadを生徒に使わせています。生徒の相互啓発を誘引することが目的です。iPadの中に写真や動画による授業のねらいとなるべき資料を入れておき、班毎にそれを観察、視聴して話し合う場を創ります。何度も班毎のメースに併せて観ることができ、4名程度の人数がちょうどiPadを媒体とした言語活動の場に適しています。教師は、それぞれの班を回りながら、指導やアドバイスを行うことが可能です。ICT機器、デジタル教育に異議を唱えている人々の最大の懸念であるのが、デジタルを通しての自己完結です。いわゆるコミュニケーションの欠如、相互啓発がないことを懸念しているのです。iPadはその活用の工夫で、その懸念を杞憂に終わらせられます。生徒一人に1台はいらないのです。

 英語では、生徒が使用する側の発想を逆転します。複数の教員がiPadを持ち、生徒に言語活動を行う場を多数創出させるのです。大袋中での実践は、文教大学の学生さんにも協力を得て、また校長も参加し、総勢7人のteacherがiPadを使用しました。30名程度の生徒は、それぞれの課題をクリアしていきます。できない生徒は、元に戻り復習をします。ここにも自らの表現を求める「言語活動の充実」が図られます。iPadがそれを容易にさせます。

 iPadを便利な機器。一人に1台使わせたい。それもありでしょう。しかし、常にそれが許される環境とは限りません。フレキシブルな使い方こそが求められるのです。10台しかなければ、どう使うか?複数の生徒に1台で相互啓発、これが一番でしょう。しかし、常にこの使い方に縛られていると苦しくなるものです。教師が複数で使うことにより、生徒の活動の幅や場が広がることもあるのです。教師が複数確保できなければ、できた生徒が順次iPadを持ちstudent teacherになることも考えられます。

 また、1台しかなくても大型TVと併用し、プレゼン場面での活用も考えられます。写真は、大袋中で実施している「PCによるプレゼン力育成講座」の様子です。この発表は生徒が1台のiPadを使っているのです。ちょうど自らのタイトルを表示し、話し始めたところです。

最終的には生徒がパワーポイントで自らのテーマでプレゼンをするのですが、この日はiPadのキーノートを使って、テーマのみ大型TVに提示し、あとは自らの言葉と身体でプレゼンしている様子です。自分で選んだテーマですからiPad1台でテーマを提示するだけでも、生徒はかなりしゃべることができます。これもiPadの使い方の一例でしょう。

 要は、活用しようとする我々教師が、ステレオタイプの使い方にこだわらない柔軟な発想を持つことでしょう。「でじたま」第14、15回コミュニティでは、その辺をワークショップで探っていきたいと考えています。

10月のコミュニティのお知らせ

10月はコミュニティを2回開催いたします。奮ってご参加ください。8月に講評でだったiPad体験とその活用を考えるワークショップを行います。8月に参加できなかった方や再度体験という方のために
2回チャンスを作りました。2回とも同じ内容ではありませんので、
続けて参加いただいてもOKです。

【第14回コミュニティ】 
日時:平成22年10月2日(土)午後1時30分〜4時
場所:文教大学北越谷校舎 11号館生涯学習センター2階
   (正門入り、正面の2階建ての建物です。裏門から入られた方は、
    正門まで回ってください。警備担当に行事等を尋ねられても返答
    できないのが通常ですので、上記会場をお忘れなく)
内容:iPad再び①「実体験&その活用を探る」ワークショップ等
    大袋中の実践(理科・家庭科・英語)映像紹介
    One more thing(新ガジェット紹介等)
持ち物:各自の判断にお任せします。

【第15回コミュニティ】
日時:平成22年10月23日(土)午後1時30分〜4時
場所:文教大学北越谷校舎 11号館生涯学習センター2階
   (正門入り、正面の2階建ての建物です。裏門から入られた方は、
    正門まで回ってください。警備担当に行事等を尋ねられても返答
    できないのが通常ですので、上記会場をお忘れなく)
内容:iPad再び②「実体験&その活用を探る」ワークショップ等
    iPadの授業活用、教材を考える
    One more thing
持ち物:各自の判断にお任せします。

参加希望は、メールにて onishi-h@silver.plala.or.jp
     (主宰:大西まで)
第14回は 9月26日(日)頃までに
第15回は10月17日(日)頃までに

でじたま事務局ができます

 平成22年8月25日に「でじたま」賛同者が100名に達しました。ひとつの区切りの数字ですね。多くのメンバー登録ありがとうございます。そう言っているうちに翌26日には、101名となりました。100も単なる通過点です。

 しかし、100名を超えると主宰jouluribo一人で事務をこなすのが、しんどくなってきました。そこで、文教大学の今田先生の研究室が事務局を引き受けていただけることになりました。今後、その通知メールが届くと思いますが、新しい事務局をよろしくお願いいたします。まずは、お知らせのみですが。

第13回コニュニティ報告-今回はひたすらiPad

 第13回コミュニティを文教大学で実施しました。参加いただいたメンバーの方々、ゲストの方々、また取材をしていただいた方々、ありがとうございました。遠くは、相模原市嵐山町からも足を運んでいただきました。30名を超える参加者で大盛況でした。iPadの魅力ですよね、決して私の魅力で集まったわけではないです(苦笑)。

今回は、アップルジャパンのエデュケーション本部の方2名も参加され、さらにNHKラジオ第1、インターネットユザー協会の取材、日本教育新聞社、東武よみうり新聞社、NHKライツ・アーカイブスセンター等々多くのメディアの方、ICT、教科書会社の方々等々、メンバーも多数参加し、実に交流しがいのあるコミュニティとなりました。写真を見ていただいてもわかりますが、iPadに触れて、小集団で共に考え、意見を交わし、実に楽しそうな様子です。このガジェットは、人を惹きつけるものを持っていますね。

 内容は、提案・講義とワークショップの2つ。iPadを10台一同に集めて触り、また大学の先生の講義もただで聴けるのは「でじたま」だけですね。どのようにiPadを授業で活用できるかの提案と示唆をしてみました。その結果として、皆さんの中でイメージが出来たり、今後考える視点を持ち帰れたとしたら、嬉しい限りです。
 
 今後、いろいろなことが考えられるデバイスでしょう。ぜひ、研究していきましょう。
 今回の「でじたま」コミュニティの様子は8月27日、午後10時〜11時、NHKラジオ第1「ジャーナル」の中で紹介されます。